「はなすための本棚」
施主の要望は、「本がある場所に人が集まり、本を介すことによって普段の会話ではあまりテーマにならない話や、きっかけがないと話せなかった話が自然とできるような場所を作ってほしい」ということだった。
本はただ読み物というだけでない。本が身近にあることによって本の情報が目に入り、本の内容を回想したり、その内容に関連するようなことを自然と話したりすることができる。そんなことがよりおこなわれるように、本棚に余白を持たせることによって、本が展示物のように機能し、人が手に取る前に人と本が向き合う時間を作る。そこから自然と本を介した対話が生まれるような意図をもって設計した。
本が生活の空間に溶け込むように、本棚とドミトリーの空間は透過性のあるパーテーションで仕切られ、本の存在がどの場所からも感じられるように心掛けた。
「企画から施工業者が介入するということ」
今回のプロジェクトの敷地は、尾道の山手地域にあり、車でアクセスすることのできない斜面地に建っている。また予算も限られていたため、その条件がディスアドバンテージにならないような施工方法、材料で計画することが最優先された。施工計画・管理を行う我々がプロジェクトの立ち上げ段階から計画に参加し、条件に合うような計画を行った。
本棚を製作するために使用した材料は、最小限の力で材料を敷地に運ぶことができるように、材料体積・重量を最小限にできるような工法を計画した。本棚の縦、横材は古民家を解体した際の乾燥して軽くなった古材を垂木サイズに細切りにし再利用した。裏板の面材は他のプロジェクトで余っていたポリエステル樹脂とガラス繊維を用いて厚み1.5mmほどの透過性のあるFRPシートを製作して使用した。
企画_チームおのみち (Shelly 芳賀智子,Ao 廣瀬蒼, TANK)
設計_チームおのみち (Ao 廣瀬蒼, TANK)
施工_TANK
施工協力_ボランティアのみなさま(計30名)
写真_藤本遙己 細川まどか